3.2.H水環ポンプと水封式ポンプ

水環真空ポンプは、JISでは 『水封式真空ポンプ』 として規格化されています。
そして、このJISの副題の英語は、Water Ring Vacuum Pumps です。また、ドイツ語では、Wasser-ring-vakuum-pumpen です。
技術用語、一般名としての Water Ring を訳すならば、水環です。或いはまた、ポンプの作動機構を表現するならば、水環です。
ところがこのポンプは日本では、ナッシュポンプと言う商品名が先行普及しました。その頃に一般名として、水封式という名が考えられたようです。
しかし、欧米において一般名として、Water Ring が定着した頃、日本でも水環ポンプと改名すべきだったものと思います。
名前などはどうでもよいものでもありますが、『水封式』と言う日本語から英語に訳す時に、Water Seal Pumps と誤訳されることがあるように、何とも誤解を生じやすい名前です。ガスの洩れを封ずることと、ガスを圧縮することとは全く別の現象ですから。
何よりも、水を環状に回転させることで、気体を圧縮するポンプ の呼び名は、水環ポンプであるべきでしょう。

水環ポンプには、2@水環ポンプの作動原理 に示すようにケーシングを円筒として、1回転で1回の吸込圧縮を行う型を1作動型と呼びます。
これに対して、ケーシングを楕円とすることで、1回転で2回の吸込圧縮を行う型を2作動型と呼びます。現在では、2作動型は、効率が悪く騒音が大きいために、ほとんど製作されなくなっています。
この2作動型をナッシュタイプ、1作動型をエルモタイプと呼ぶ向きもありますが、これは今では、より誤解を招く呼び方です。
また、水環真空ポンプは水の蒸気圧に支配されるので、運転可能真空度に限界があります。このため、(株)水環技研は、ポンプ単段・1段ポンプで十分と考えていますが、ポンプ内部にインペラーを2個付けて2段ポンプの形にしている機種もあります。(3G構造矛盾型ポンプ参照) しかし、この内部2段のタイプには、そのことを示す呼び名は、現在のところありません。
更に時として、水以外の液体を作動液として用いる場合もあります。乾き塩素ガスを濃硫酸で運転する圧縮機は、その代表例です。このために、液封式真空ポンプや液封式圧縮機と言う呼び名もあります。



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